“絶滅危惧”から復活 パンダに倣い「農」も 日本農業新聞 2018年08月14日

“絶滅危惧”から復活 パンダに倣い「農」も 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

2018年08月14日

コラム 今よみ~政治・経済・農業

 この夏訪ねた農業で、特に話題性があり面白かったのは①栃木県下野市のかんぴょう(ユウガオ)むき体験②兵庫県豊岡市のコウノトリ育むお米(JAたじま)③世界農業遺産認定の宮崎県椎葉村の焼き畑と諸塚村の掲げる林業立村④東京都内で開かれた棚田学会で発表された全国の棚田保全活動──です。

 これらの共通点は、いずれも地域に根差した持続可能な農業システムのはずが、労力がかかり、後継者が足りず、もうからない(②については後述)ということです。

 かんぴょう加工を体験させてもらうと、足踏みろくろでシュルシュルシュー! と、皮がリボン状に飛び出し、面白くてたまりません。真夏の2カ月に集中するため、普段体験の受け入れはなく、生産者の北野道世さんは家族3人で午前2時から作業に追われます。生産日本一の栃木ですが、中国産に押され、次の代のことは分かりません。

 ところが、産地での体験をインターネット交流サイト(SNS)でアップすると、「かんぴょうむきおもしろそう! やりたい」という声や「コウノトリ見たい」「焼き畑したい」「棚田絶景スゴい」など、うらやむコメントがたくさん寄せられたのです。

 これらの農業は「絶滅危惧農業」かもしれません。しかし、都市住民や旅行者にとってはレジャーとして対価を払ってでも得たい体験です。希少だからこそ継承されるべき農業として人の心を動かす力があるのです。

 収益面でも成功しているコウノトリ育むお米は、JAたじまがグローバルGAP(農業生産工程管理)を取得し、輸出もしています。特筆すべきは、上野動物園のパンダ・シャンシャンに米粉として提供しているのです。「環境に配慮した安全な原料をパンダに与えたい」と動物園側から要望があり、竹の補助食として米粉だんごを与えています。自然環境の保護や、生物多様性のシンボルであるパンダですから、餌も環境に配慮したいというわけです。そうして世界中から注目され、愛され、保護政策が進んだパンダは2016年、絶滅危惧指定から解除されました。危機が叫ばれた結果増えて、復活したのです。

 パンダと農業を比べるのは無理があるでしょうか。しかし、愛すべき存在として、親しんだり、手を差し伸べたくなる魅力はどの農業にもあります。存続の危機を発信し、ファンが増えれば、絶滅どころか地域ににぎわいを生む“客寄せスポット”になり得ます。農業の最大の課題は、無関心ではないでしょうか。 

 

コラム 今よみ~政治・経済・農業

ベジアナ・小谷あゆみ

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