カレーですよ4649(新宿 新宿中村屋総本店 グランナ)「香取薫×中村屋グランナ コラボレーションディナー」前編。

素晴らしい会が催されると聞いていました。
ここまで数回開催されたそのイベント、いきそびれており、後悔していました。今回はなんとしてもいかないと。



カレーですよ。



特別賞味会というその名前は聞いていました。ナイルレストランやデリーなど、名だたる日本の、というよりも、結局この3つの店、という誰に言っても他の答えが出てこないであろう、盤石な3店舗が集まっての会を新宿中村屋総本店で催していらっしゃる。行きたくて仕方なかった会だったのですが、都合がつきませんでした。

次回こそは、と思っている矢先、今度の特別賞味会、なんと料理研究家の香取薫先生とのコラボレーションと聞きました。これはもう、なんとしても行かねばならない。
そうは言いながらも数日で満席。50席以上用意された1万円の席が飛ぶようになくなります。色々とお願いをしてなんとか席につけたのは今回主催の皆様の御尽力。ありがたく、その特等席におじゃまをすることにしました。

さあ、新宿中村屋総本店が誇る、特別賞味会。


「香取薫×中村屋グランナ 
    コラボレーションディナー」


に参加です。
始まる前からとても大変に価値がある、勉強になる食事会であることが理解できます。

まず面白いのが、この組み合わせでしょう。
新宿中村屋とくればご存知の方も多い、インド独立運動の志士ラス・ビハリ・ボースの時代まで遡る歴史を持っています。スパイス料理と洗練されたサービス、レストランとしての背骨の強さと揺るぎのない味。その確立された世界観は圧倒されるばかりです。

そしてかたや、インド・スパイス料理研究家でアーユルヴェーダ料理の第一人者、料理教室「キッチンスタジオペイズリー」を主催する香取薫先生。
これはもう仕方がない、望んでも男性にはたどり着けない、女性でしか成し得ぬ研究を日々続ける香取先生。現地踏破の先にある南アジアの家庭、その台所に入って生活を共にしながら古くから受け継がれるほんとうの意味での現地料理、土着の民族料理を研究、実践するという大変に貴重なスタイルをもって活動をされています。

その2つの異なる立場と要素がこの晩、一つの皿の上に集まるのです。ちょっとやそっとじゃあ、想像し難い。
それでも必死に今回の見どころと思われるポイントを予想して、落ち着かぬまま着席をしました。

香取先生の料理は女の人だからこそ得られる本当の意味での現地の家庭料理。本物のその国その場所の料理なわけです。芸術として、楽しみとして、嗜好品として作られるハレという側面であるレストラン料理とはまた別のベクトルを持っているということ。その現地のお母さんたちが普通にやっていることを、根気強く見て、実際に手を動かして、聞き出して、そのルーツを探ったり理由を考えたりしながら進んでゆく。そういう初源、根元の料理のスタイルを新宿中村屋の極めてオーセンティックでかつそれこそが大変に価値があるレストランスタイルの料理というものと、どういう形で融合しているのか。また、その融合はどのように行われたのかが見所ではないかと考えていました。

期待と緊張の中、幕が上がります。
会場は当然ながら満席。あっ!なんと。同じテーブルの列の角の席に座っていらっしゃるのは中村屋の総料理長の二宮さんだ!!なんということだ。今日はお客様でいらっしゃてるのですね。石崎料理長、大変だ。

まず供される、スターターワイン。
ここ、新宿中村屋総本店のレストラン、GRANNA。ワインは日本ワインのみを扱い、ソムリエが料理に合わせて厳選をしたものが提供されます。スパイス料理の歴史が長い中村屋の出した答えが、スパイス料理ではあるが、この日本、新宿で培われた料理であることを念頭に置き、日本ワインのみで構成したというお話を聞いて感銘を受けました。

「レッドミルレンニューム」は滋賀、ヒトミワイナリーの中口の白ワイン、これががまずやってきます。
爽やかでのどごしいいものです。口の中全体にふくよかなライチのような香りが回り、とてもフレッシュな味わいでした。食事の前にまず口をリセットする、料理のコースが始まる知らせのような感があって、いいなと感じます。ソムリエから詳しいお話すも伺って、もうすでに楽しい食事への予感が確信に変わります。さあ、始まり。


テーブルにまずやってきた小さなお皿。
素朴な感じで作られたピックに乗った黄色い小さなかけら。なんだろう、これ。

「食前のしょうが」

でした。
これはジンジャーであったのか。口に含むと心地よい刺激と鼻を抜ける香り、酸っぱさとふくよかさを感じる物で、たちまちコースのスタートラインに連れていかれる感があります。気持ちが切り替わるんですね。
生姜にレモン汁と岩塩をかけたもので、ちょっと目がさめるという感じ。消化力を高めてくれる効果があるとのことで、きちんとしているわけです。この理由を聞きながらの食事、こういうのは望んでも望めるものではないもので、ここでもうこの夜の価値がわかってきます。

前菜が来ました。
三品が一枚の皿の上に乗る、揚げ物3種盛り合わせです。

「クリスピーピンディー」
オクラのフライです。カリカリにフライされているのですが、サクサクする食感を楽しんでいると、まずやってくるうまみの強さ、香ばしさ。そこから徐々にオクラのねっとりという食感がやってくるおろもしさ。ああ、これは面白いものだなあ。おいしくていいおつまみです。

「ビーツカツレツ」
西洋料理だとカットレット、クロケットに準ずるものです。ケーララ州のスタイルの料理。ロシア料理や中東料理でも多用される強いピンク色の根菜、ビーツ。赤カブではなくて、ほうれん草の仲間なのだそう。ビーツのやんわりした食感の楽しさと食べやすいカットサイズでフィリングの中、舌を泳がせるのが楽しいものです。はたいてある粉が細かくて食感がよく、舌触りとがらないのがいいですねえ。優しい舌触りの揚げ物に仕上がっています。ふくよかな味で大変好み。

「ベビーコーンワルワル」
ベビーコーンのフライ。なんでもインドでは近年ベビーコーンが人気らしいんです。そんなお話も香取賛成が聞かせてくれます。甘みと辛さ、うまみが一緒にやってくる面白いもの。噛むごとにジワリと甘さが口中に広がるのが素晴らしい。強目の味付けは、なるほどワインのマリアージュコースを感じさせるもの。そう、今回は中村屋さんがワインのマリアージュにこだわったそうです。確かにこれはぜひワインが欲しいと感じますね。

「大豆のスープ」
ほんのりと豆の油的な香りが上がります。酸味とマイルド感、クリーミー感があり、口に運ぶほどに豆の味わいが太くなっていくのが面白いスープです。これはおいしい。とても好き。喉の奥が少し暖かくなる、温まるスープでとてもいいです。とても好きな味だなあ。東インドを意識したレシピなのだそうですよ。
実はこれ、インドにオリジナルはない、香取先生のオリジナルレシピから。なぜインドにはないのかというお話もうかがえたのが興味深かったです。インドの人々はどうやら大豆を茹でた時の匂いやついてくる例の薄皮が苦手なようだといいます。なのでレシピ、料理自体が少ないようだとのこと。なるほどねえ。こういうことを聞きながら食べる料理の楽しいことと言ったらないですよ。

前菜とスープが済んで、ここでワインを変えてみます。
山形、朝日町ワイナリーの「山形マスカットベリーA」。
甘口でイチゴのようなフレッシュな香りが強く感じられます。口に含むと思わず笑顔になってしまうような、可愛らしい味でした。なるほどこれに合わせる料理が次のプレートになるのですね。

「青菜のプレート」
これがね、実に楽しいものだったんです。4種もの調理法と素材の違う青菜類を自在に配した圧巻のプレート。なぜこれをやりたかったか、という香取先生の話に圧倒されました。
北インドのかなり田舎、山奥といってもいいような地域を少し前に旅した香取先生の思い出と、そこで手に入れた知見と咀嚼が詰まった一皿なんです。山深い地域では収穫できるものが限定され、当然ながら季節によっては豆だけを食べねばならぬ時期、青菜などはものだけを食べる時期などがあるはずですね。そういう中で、日常の伝統料理には飽きることのない料理のバリエーションや体への栄養バランスなどが必ず考えられているはずと考えたそうです。そういうものを含めて1枚のプレートにまとめたかったという渾身のひと皿。ちょっとなんというか感激してしまいます。

「アレッタのマスタードオイル焼き」
サルソーンというインドの青菜を代替えして「アレッタ」を1本丸々焼き上げてあります。「アレッタ」は聞いたことがない野菜だったのですが、なんでもケールとブロッコリを掛け合わせた国内産のまだ新しい品種の青菜だそうです。茎の辺りを見るとなるほど太くてブロッコリに似ている感じがあるなあ。食感、香りともに良いんですよこれ。ほんのり感じる甘味と黒岩塩のシンプルな味付けが素朴でチャーミングでした。でも、香取先生のお話とともに記憶に残る味です。


「カフリ」
ウッタラーカンド州クマオー族のガルワール料理。厳しい環境からその土地のそのシーズンに手にはいる野菜の全てを使って作るのだそう。このプレートではかぼちゃの葉や菜花などの青菜にオクラ、ズッキーニを加えてクタクタになるまで煮込んでありました。スターターには一般的なクミン、マスタード等ではなくジャキアという珍しいスパイスを使うのだそうです。ヒマラヤ地方、ガルワールで使われるのスパイス。知らなかった。
添えられたお粥は蒸したヒエを湯がいたもの。食材に貧しい時期、冬の時期の栄養摂取に大事なものらしいです。

「小松菜のバジ」
菜っ葉としては味わいは薄めな小松菜ですが、タマネギ炒めを合わせて旨味を加えてやるという手法で調理されます。これは、特に好みだなあ。この一品だけ強く旨味を感じるのはそのためなんだね、とお話を聞きながら納得。やはりその料理の意図をご本人から聞きながらの食事というのは本当に贅沢なことで、何よりお腹とともに知的好奇心が満たされていくというのはちょっと代替えできない価値があると感じます。すごいなあ、ここまででもうすごい。もっとすごくなります。

「クレソンのサブジ」
大変に難しいと言われるクレソンのサブジ。そのフレッシュな強い苦味を生かし、噛んだ時の食感を確実に残して仕上げることが肝となり、それこそが大変難しいのだそう。また、きちんとフレッシュないい素材を使うことも大切になってきます。メニュー作りのテスト調理の過程で、香取先生の現地での体験、その説明を口頭でするや中村屋のシェフの方々がその場で理解、咀嚼してたちまち完璧なものを作ってしまった驚きを香取先生が語っていらっしゃいました。ああ、なるほど、と強く感じ入ります。
違う時間軸で進んできた中村屋のシェフの皆さんと香取先生の邂逅がこの溶岩プレートの上であった、ということだよ。なんという面白い饗宴でしょうか。とんでもないものです、これは。ほんのり香るクミンとガーリックがクレソンのもともと持つ苦味や香りを後押しして、大変な美味。

プレートの上での青菜という一見地味なテーマ。気をつけねばたかが青菜で終わってしまう人もいるでしょうね。でも、そのテーマをブーストする組み合わせの楽しさと、比べる面白さ。写真をプロジェクターで見せてもらいながら、ご本人から説明をもらって食べるという体験。これで何もかもががまったく違う価値を纏うわけです。楽しすぎてちょっと頭が容量オーバーになりつつあります。

ブログとしての文章も長くなりつつあります故、次回、後編へ。


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