家畜伝染病予防法の規則改正のなにが問題なのか。おおまかな解説ですが一般の人向けに書きました。

家畜伝染病予防法の規則改正のなにが問題なのか。

ざっくりですが一般の人向けに書きます。(最初はそのつもりでした)

 

 

全国山羊ネットワーク が意見公募についてHPで情報を提供しています。

http://japangoat.web.fc2.com/topic.html

(一部を抜粋)

 

家畜伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令案のパブリックコメントが募集されています。

 2018年9月に国内で26年ぶりに家畜伝染病である豚熱(CSF)が発生し、

2020年3月末現在で殺処分頭数が16万頭を超えるなど、2010年に発生した口蹄疫以来、

最悪の家畜伝染病事案となっています。

 このような状況を踏まえ、4月3日に家畜伝染病予防法の一部を改正する法律(以下、「改正法」)が公布され、

豚等の基準と、他畜種の飼養衛生管理基準についても同様に見直すこととされています。

 

 この中で豚、イノシシに加えて、牛、水牛、鹿、めん羊、山羊に関して「放牧制限の準備」が新たに追加されました。

つまり、放牧の停止又は制限があった場合に備え家畜を飼養できる畜舎の確保または出荷もしくは移動のための準備措置を講ずることが定められます。

 山羊を含め草食家畜にとって放牧は基本的な飼い方であり、

これを停止することは家畜飼養及び畜産業に与える影響が甚大です。

また、山羊は耕作放棄地の解消や畦畔や生活道路等の維持管理においても活躍していますが、

放牧が停止されるとこういった活動も行えなくなるかもしれません。

 

 パブリックコメントは広く国民の意見・情報を求められるもので、

今回改正される省令案に山羊も深く関わることから、当サイトでも紹介することとしました。

パブリックコメントの募集は6月11日が締め切りです。

 

以上、全国山羊ネットワークからの抜粋です。

 

わたしも昨日のコラムに書きましたが、気になるのはこの部分です。

https://www.agrinews.co.jp/p50955.html

 

改正案の4ページの 9項目「放牧制限の準備」

9: 放牧の停止又は制限があった場合に備え、

家畜を飼養できる畜舎の確保または出荷もしくは移動のため準備措置を講ずること

https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000202058

 

 

法律のことばって難しいですよね。

話し言葉に書き換えると、

放牧の停止や制限があった場合(つまり、近隣で家畜の伝染病が発生した場合)

に備え、←ここ!つまり、発生しなくても備えとして、

家畜を飼養できる畜舎を確保しておくことが必要というわけです。

 

※ちなみにこの文言は、「豚とイノシシの飼養衛生管理基準」には、現行法からありました。

家畜と一口に言っても、牛と豚では特徴が違い、豚はもともと病気に弱い上に、2年前から

豚熱(「豚コレラ・CSF」という名称から今年2月に変更)の感染が拡大して大打撃を受けました。今年3月までに16万頭の豚が殺処分されました。

これほどの大きな悲劇は重く受け止めなければなりません。

よって今回の「改正」は、豚熱の予防対策がメインですが、それに乗じて、

「牛・ヤギ・ヒツジ(水牛鹿)」にも、今までは書かれていなかった「放牧の制限」が加えられたのです。

 

この法律が施行されたら、

畜舎がない生産者は法律違反になるということです。

 

放牧農家にもいろんなパターンがあります。

 

夏山冬里方式などといわれ、

夏場は山(牧草地)へ放牧し、

冬場は草(エサ)が生えないから、畜舎の中で飼うという生産者は、

もともと畜舎を持っています。

しかし、

「通年放牧といって、冬の寒い時期でも、

牛は(スイスやアルプスで見かけるように)寒さに強いので、

(逆に暑さに弱い)外で過ごしてもらい、

山にエサがないので、エサ(草)は、夏の間に刈っておいた牧草をあげるという=

=通年放牧にしている生産者は、ちょっとした雨よけの小屋とか、

搾乳するための畜舎しか持っていない場合があります。

「飼養できる畜舎」となると、簡易ではなく、長期間過ごせるちゃんとした畜舎が必要ですが、

その建設費用どうするの?

って問題がまずひとつ。

さらに、そもそも牛の生態を考えると、部屋の中にいるよりもスイスやアルプスの風景のように自然の中でゆったりと歩いたり寝そべったり牧草をはむはむするのが自然に近い過ごし方ですよね。

そういう牛の生態を生かした飼い方をポリシーとしている生産者の農法を、無視することになりませんかね~。

という疑問を呈しているのです。

 

また、ヤギの場合はいろんな雑草を比較的食べてくれるという特徴があり、

中山間地の棚田や、耕作放棄地の斜面で飼われています。

これまたアルプスの少女のユキちゃんと同じで、急な斜面に強いのです。
 

(もちろん、牛の酪農のように、ヤギ乳をしぼる生産者や、ヤギ肉のための生産者もいますが、彼らは畜舎を持っている場合と持ってない場合の両方います。)

(斜面や雑草に強い)ヤギの特徴を活かして飼っているのだから、

棚田などでは畜舎といっても、犬小屋みたいな簡易なものが多いです。

わたしの知ってる岡山の棚田でも、伊豆の松崎町の棚田でも1~2頭という

(いわば素人的な飼い方ですが)

ヤギの存在が、棚田に遊びに来た人を癒やしたり、農の世界へ親しむきっかけとなったり、

近所のお年寄りが懐かしがったり(昭和30~40年ごろまでは日本中の農家でヤギが飼われていました)

農業の多面的機能といいますが、

ヤギ生産者(ヤギのミルクを絞って出荷する)ほどではないにせよ(もちろんそういう生産者もいます)、

簡易な飼い方ではあるけれど、ペットではなく家畜であり(=家畜伝染病予防法に適用されます。また飼うには保健所に届け出が必要)、

せっかく多様な人と農業をつなげようとしている小さな家畜と、飼う人の役割・存在を、

これまた無視することになりませんか。

メインの生産の仕事じゃないのに、ヤギのために立派な畜舎を建てる費用はどうするの?

自分ではできないから、じゃあもうヤギを飼うのをやめるしかないんですか。

って話になるのです。

 

かなりおおざっぱですが、大枠の理解として書きました。

 

(6月4日追記します)

 

 

家畜伝染病の予防が、重要・不可欠なことはわたしもよく承知しています。

2010年に、宮崎県で発生した口蹄疫は(ウシもブタもかかる感染症だったので)

ウシとブタ合わせて8万7千頭が殺処分されました。(合掌)

農家への補償や死体の処理にかかった費用は230億円。

損失だけでなく、農家は生産意欲を失うほどの大きなショックで、今でも生産者の全国大会があるたび、あの日の悲しみがありありと語られます。

 

家畜の伝染病は防がなければなりません。

 

(しつこく書きますが、この間のわたしの発信を読んだ人の中に

わたしが放牧だけを推進してまるで感染症との向き合い方を理解していないように誤解して受け止めている人がいたので、それは違いますよという意味で失礼しますネ)

 

合わせて考えるべきなのは、そもそもの家畜の「健康な」飼養管理方法です。

「家畜伝染病予防」の(14)項目には「密飼いの防止」として、

「14 家畜の健康に悪影響を及ぼすような過密な状態で家畜を飼養しないこと」と明記されています。

室内(畜舎内)の「密」は家畜の健康からもやめましょうと明示しているのです。

「密」にしないため広々と余裕を持って過ごせる広い畜舎を準備し、

風通しや暑熱対策の換気扇を準備し、毎日糞尿の掃除をして清潔さを保ち・・・

どれだけの設備投資がかかるか。

 

ルールを決めてしまう前に、効果や可能性の大きさも包括的に検討するべきで、

方法を限定してしまうのは、賢明とはいえません。

一旦決めるとまず元には戻せないからです。

 

業界も、安全も、守らなければなりませんが、
対策の効果、優先順位、対策に必要な費用の出どころなど、様々なことを全体的に

議論してからにしましょうと言っているのです。

 

ウィルスは撃退できました。

そして誰もいなくなりました。

 

では本末転倒です。

 

 

生産者が意欲を失うものにしてはいけませんよね。

 

 

いま畜産業界全体が直面している大きな課題としては、

今日の日本農業新聞(6月4日付)にもありましたが、

大変なのは和牛の子牛価格の下落です。

(去年1頭80万円前後が今は60万円を切って50万円台になり22%減です。)

まだこの先も見えない状態が続き、

和牛を生産しても売り先がなく、どんどん価格が下がって生産現場が疲弊しています。

収入が減り赤字になっているところへ追い打ちをかけると本当に担い手はいなくなります。

今後の長期的な方針としてはそれよりも経費をかけないで、バランスをとる経営方針を打ち出すべきなのではないか。

防疫を軽んじているのではありません。

防疫だけが先行しては、それでなくても減り続けて増える兆しのない農業(人口)を

世の中からなくしかねません。

 

 

(自分のコラムより一部抜粋)

 これでは、飼料自給や家畜の主体性を活かし、

低い設備投資で営む放牧農家に配慮のある見直しとは言えません。

 仮に搾乳舎しかない場合、畜舎の建設費用はどこから出るのでしょう。

また、棚田地域や耕作放棄地などで見られるヤギなどの放牧も難しくなり、

市民との親しみや、生き物の命を伝える教育的な役割も損なわれます。

 

 そもそも野生イノシシが里を荒らさないためには、林業や、

中山間地での小規模な有畜複合農業を営み続けることが大切です。

食料、飼料、肥料の自給こそが、里山の循環、生態系を理解した

鳥獣害・ウィルス対策になるのです。

 

 

 

省令案の内容やパブリックコメントの提出などは下記のサイトをご覧ください。

家畜伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令案の意見・情報の募集について

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public

 

 

一般のひと向けと思いましたが書き足していくと長くなりましたが、

ぜひこの問題を知ってもらいたくて書きました。

コラム原稿を書くにあたって、農水省の担当部長にも事前に質問をして回答をいただき、

これは「案」なので、ご意見を集めているとのことでした。

なので、みんなで理解して、意見を発信することがだいじだと思っています。

まずは知ることから!

 

 

ベジアナ・じゃないほうの農業応援アナ@あゆみ

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